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                                      夕暮れ・・渡良瀬川土手より                                                                             

 

はじめに

  浅草から東武伊勢崎線に乗り、関東平野を北西に進むとやがて低い山々が現れる。一番最初に山に近づいた町、それが足利市である。渡良瀬川が町なかを西から東へ流れ、北には日光、足尾へと連なるおだやかな山並みが見わたせる。晴れた日には赤城、袈裟丸、皇海、庚申、白根、男体の山々がひときわ高く聳え、雪をまとった季節にはより立派に見える。そんな町の小高い山裾に私は育った。

幼い頃、私の家は父が果樹園を営んでいた。なだらかな斜面に植えた多くの桃の若樹に、春はいっせいに明るい桃色の花が咲き、そこを訪れる野鳥や蝶や咲く花を友とした。

 中学生の頃から、それまで蝶の採集で訪れた山々に、今度は登山として出かけるようになった。歩く周りをみれば、樹も草も鳥も蝶も、そして流れる雲も、どれをとってもいとおしい。いつもカメラを首にぶら下げ、ザックにはしまわなかった。

 私の自然とのかかわりは、分類や研究と言うものではなく、もっと知りたい・・見てみたという単純なものだった。

 人間と同じようにこの世に存在し、やがて消滅するかもしれない蝶や花や鳥が在る。

 近頃は、どこの本屋にも自然に関するガイドブックがたくさん並んでいる。「どこへ行けばいつ逢える」それも悪くないけれど、どこかに出掛ければ何かに出逢う。たとえ目立たない花や虫でも、もう一歩踏み出し、もう少しのんびり見ていると思わぬ発見がある。いつの季節でも何かしらの出逢いは必ずある。目的としたもの以外にけっこう思わぬ収穫が多い。

 自然は移ろいやすい。造成や伐採で私のフィールドの生物達も減少の一途だ。山裾の畑や、沢沿いの田んぼは消え、小沢の湿地のハンノキ林は切られた。林道や空き地にはゴミが捨てられている。自然に接する人間は増えた。自然の中の生物は減った。

 蝶に関して普通種は、ほとんど渡良瀬川流域の山々、それらの山々から流れ出す渓流に沿った林道、周辺の里山など足利周辺を中心に撮影している。他に群馬、長野、そして新潟、山梨がわずかに含まれる。鳥はすべて我が家周辺(数キロ)の範囲である。私が育った身近な自然をフィールドとして長い間撮影してきた。

 当初、このホームページは写真及び随想集として開設したので詳しいデーターはあえて書かなかったが、見てくださる皆さんの御意見を取り入れ大まかな場所を記すことに改めた。

 皆さんも身近な自然の中に出かけて見ませんか。写真に撮るのはカメラが必要ですが見るのはだれにでもできます。           
                          2000年 10月22日記

                                                       
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